・・・・30選で留めたものの、やはり物足りないし、もう少し縛り緩くして、前に躊躇したもの等を列挙したらまだ20個ありました。
まあ正直「これは違うだろ」といわれかねないものもありますが、少なくとも所謂本流のプログレを聴くのと同じ気持ちで接している作品です。くどくて恐縮。
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■Amon duul2 "Yeti" (1970 Germany)
安っぽい着色料で染め上げた明晰夢のような、荒々しいのにブヨブヨで、世界がクロックダウンしていくような幻惑音楽。2LPで売られていた頃「2枚目が2枚入っていたので、1枚目が2枚入っていた方、連絡下さい」というネタみたいな投書が某誌であったけど、そんな事も許されてしまうような。
■Bondage Fruits "Recit" (1997 日本)
この作品からビブラフォンとコントラバスを擁した編成になったんでしたっけ。鬼怒さんの超絶ギターを軸に猛スピードで駆け抜ける様が圧巻。本流プログレからアヴァンロックへの正統進化の雛形といった感じです。
■Cervello "Melos" (1973 Italy)
本当なら30選に入れたいところですが、Palepoliと被っちゃうので外してました。非常にイマジナティヴで、Palepoliがイメージの連鎖的作風とすれば、こちらはもっと物語性を強調した感じ。感傷的且ついびつな曲ばかりで、ホントよくこんなの作ったなあと思います。
■Deep Purple "The Book of Taliesyn" (1968 UK)
ハードロックの巨匠の初期作品という評価は御破算にして、Brian Auger辺りと同列で評価したいところ。モッド臭い60thサウンドを基調としながらセミ・クラシック的な仕掛けを随所に織り込んだ独特の作風。より徹底されているのは3rdですが、冴えと鮮度でやはりこれ。カバー曲のセンスも良好。
プログレカテでこれより緩いバンドなんていくらでもいるのでは。
■Discus "Tot Licht!" (2003 Indonesia)
前々回のSimak Dialogのコメで「現代プログレの理想形」といったのは、Naked City(古い)は勿論、Mr.BangleやらSleepy Time Gorilla MuseumやらMars Voltaやらを経過していれば寧ろ保守的とも言える作風だから。決してネガティヴなニュアンスではありません。同時代感覚を見事に消化しきった極めて濃度の高い音楽。
■Glenn Branca "Symphony No. 1 (Tonal Plexus)" (1983 US)
This Heatがプログレ認定されるなら、ソニック・ユースの二人が参加したこれも是非認定したいところ。ロックのフォーマットを用いた現代音楽ですが、複数のプリペアドギターに依る巨大なサウンドウォールは圧巻。
■Kluster "Zwei/Osterei" (1969 Germany)
グオ~ングオ~ン、どしゃ~ん、とかいってるだけですが、かなり楽しく聴けます。「やはり音楽の三要素はリズム、メロディー、ハーモニー」とおっしゃる方に小一時間(ry
■Material "Hallucination Engine" (1994 US)
永遠のまどろみのような幻想トライバルジャズファンク。後半の感傷的なトリップ感はかなりヤバイです。音像的には「プログレ」のイメージとは相当かけ離れますが、「異種混合幻想音楽」の観点からすれば問題無いかと。この路線でのラズウェルの到達点の一つ。
■Mouse on the Keys "an anxious objects" (2009 日本)
アーバンジャズに構築美系プログレを織り込んだような音。ドラマチックなメロとロック由来のスリリングな緊張感を持ちながら尚且つお洒落。近年のキーボード系では白眉の存在。
■Sajjanu "Pechiku!" (2009 日本)
2ギター+ドラムのパワートリオ。プログレのキーワード「変拍子」「複雑な構成」を用いるなら即プログレ認定・・・なんだけれども、キャッチーなリフの応酬が矢継ぎ早に変化していく様は形容不可。始まりも終わりもさっぱり分らん奇っ怪な音楽。CDはおとなしい仕上りなので、まずライヴを見るべし。直近の若手最強バンドの一つ。アホすぎます。
■sasakure u.k. ”プロトタイプ ナナクジャク" (2011 日本)
ボカロってだけで避けられそうですが、変拍子カンタベリーをエレクトロニカに転じた様な1曲目を始め、エレピやオルガン音源を用いた曲などアナログっぽい音作り+ファンタジックな作風はプログレリスナーのハートを射るのに十分かと。
■Tango Crash "Otra Senata" (2005 Germany)
個人的にはゼロ年代で最もハマった作品。チェンバーロックとエレクトロニカ、ビル・ラズウェル風ミクスチャーを一体にしたようなアヴァンギャルド・タンゴ。シリアスで重いサウンドながら、ノレる部分も多くて非常に面白いです。タンゴ苦手な方でも十分聴けると思います。
■The Observatory "A far Cry from Here" (2007 Singapore)
シンガポールのポストロック・バンド。TortoiseとJaga Jazziestの良い所拝借してヘヴィーにしたような印象。メロトロン音源も使っていてプログレへの親和性は高い、というかプログレって言っちゃっても良いんじゃないのこれ。70th色の強い次作も良いですが、ノリとかっこ良さで本作。
■Think of One "Marrakech Emballages Ensemble3" (2002 Belgium)
シリアスなチェンバー・ロックからスタートして、ワールド系ミクスチャーに移行していったバンドですが、グナワ音楽を取り上げた本作は、凡百の「プログレ」を吹き飛ばす重さとパワーを持った怪作。怪しげな雰囲気と混沌としたヘヴィーネスはエスノ・プログレとして十分通用するかと。
■This Heat (S/T) (1979 UK)
昔はプログレ認定されてませんでしたが、一時期は「プログレ」って言葉自体に古臭い印象があったので止むを得なかったんでしょうね。プログレファン側からすればプログレ以外の何物でもなかったのですが。完成度では2ndやキャンバーウェルナウに軍配が上がりますが、インパクトとエポックという点ではこの1stに飛び抜けた印象があります。
昔バンド仲間とよく「ガンガラ ガンガラ ピーッ!ガンガラ ガンガラ ピーッ!」とHorizontal Holdの真似して歌ってました(This Heatごっこ)。
■Tortoise "Standards" (2000 US)
ポストロックの基本中の基本みたいな人達で、その後の影響は勿論、今更「プログレとの近似性が云々」などと語るまでもないと想いますが、TNTとそれに続く本作は未だに魅力を失っていないし、まさにStandardsになっているかと。
もう10年以上も前の作品かと思うと、年月を意識させられてちょっとげんなり(笑。
■Zazou Bikaye CYI "Noir Et Blanc" (1982 Belgium)
Cos~Aksaq MaboulのMarc Holanderが設立したCrammed Discの初期作。アフロ的要素をエレクトロニカに置き換えた作品で、当時はあまりなかったタイプの音だと思います。ヌメヌメとした感触と慎重に選ばれた音群は、直近の作品と比較しても色あせておらず充分刺激的。ゲストにFred FrithやVincent Kenisらもいますが然程目立たず。
■るしろう "3.27830" (2006 日本)
ライブシーンにおいては、Zheul/チェンバー系のスーパー(アホアホ)トリオとして認知度高すぎると思います。1作目と甲乙つけがたいですが、セルフプロデュースの点でこちらか。てかこの人達もCDよりライヴ。
■三保敬とジャズイレヴン "こけざる組曲" (1971 日本)
特定の年齢層以上ならば11PMの「シャバダバシャバダバ~♫」を作ったヒト、といえば認知して頂けるかと。本作は硬派なエレクトリック・ジャズに邦楽ぶち込んでちょっと現代音楽っぽい響きもある不思議な作品。かなりカッコいいですし、日本のジャズ・ロック系プログレの傑作の一つとしてカウントしても全く問題ないはず。
■渋さ知らズ"渋星" (2004 日本)
元々マグマやクリムゾンに通じる重さやぶ厚さ、大袈裟さを持っていた集合体。個人的にはグロテスクなステージングも含め、ちょっとオザンナ的なものを求める対象であったりします。本作は久しぶりのスタジオ録音で、無駄な大袈裟さが宇宙レベルで爆発した快作。その分胡散臭さは後退してますが、これはコレで良いと思います。1曲目なんて完全に"RED"。
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以上です。・・・上記の内比較的新しいものについては、まだ個人的評価が定まりきっていないものもありますが、現時点で強い感銘を受けた作品ですし、やはりプログレ耳を持つ方に少しでも聴くチャンスが出来れば、というささやかな願いも込めて選んでます。
ホントは他にも迷ったものがあるのですが、これ以上風呂敷広げると意味不明になりそうなのでこの辺りで(笑
。
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