■5UU's "Crisis in Cray" (1997 USA)
後期ヘンリーカウ/アートベアーズ的暗さにクリムゾンの重さ+ジョン・アンダーソンそっくりのヴォーカル。
ドス黒いレコメン・サウンドと古典プログレの美学を併せ持つ点で90年代半ばに於いては明らかにエポックだったと思います。前作も良いけどインパクトでこれ最強。
ただこの時期のDave Kermanの八面六臂の活躍には目を見張るものの、あまりの出現頻度が一時期の「何処を向いても吉田達也」状態で、ちと食傷気味になった事も確かw。
■Aksak Maboule "Onze Danses Por Combattre La Migraine"(1977 Belgium)
精緻な室内楽とチープなメロのパッチワーク。次作に較べ「プログレ」の語法からは大幅にずれますが、文脈的にはやはりプログレとして聴いてしまう。個人的には癒しの音楽でもあります。割と最近になって聴きましたが、多分これからもずっと愛聴盤。ZNRに近似性あるものの、こっちの方が何倍も好き。
■Art Zoyd "Symphonie pour le jour où brûleront les cités "(再録版 1980 FRANCE)
コレ又ぶったまげーしょん音楽。ドラムレスの捻くれた管弦楽と怒鳴り声、狂える廃墟のオーケストラ。今でこそインパクトも薄れましたが、80年代初頭においてはあまりにも変な音楽でした。「凄い変な音楽を聴いてる凄いオレ」という勘違いを発動させた元凶の一つ。当時「変さ」ではメキシコのDecibelと双璧だったかと。
■Banco del Mutuo Soccorso "Io sono nato libero"(1973 Italy)
眩い午後の日差しを思わせる不思議な明るさ+アヴァンギャルド気味の構築美。前作のパワープレイをネガ転したような引きの美学と緊張感。最初は掴みどころなくて困りましたが、一旦把握してしまうと、その魅力にどっぷり。とってもイタリア。これ以前とも以降とも異なる、地味に特異な作風は、Banco諸作のなかでも突出しているように感じます。
■Carpe Diem "Cueille Le Jour"(1976 Frace)
まさにジャケットそのまま、漆黒の闇に浮かぶ極彩色の儚げなイメージ。抽象的な視覚イメージの喚起力において、このタイプは他に思い当たらない。かなり特異なバンドだと思います。
■Cassiber "A Face We All Know"(1990 Germany)
当時まだ新しかったサンプラーの大胆な使用も面白いのですが、否応なしに不条理劇に巻き込まれていくドラマ性が特筆もの。ピンチョンの「重力の虹」の一節がモチーフだそうですが、個人的にはディックの「流れよ我が涙、と警官は言った」を連想してしまいます。一部のデジタル機器の音の古さは否めませんが、混沌とした世界観はいまだ圧倒的。幸運にも見られた日本公演も素晴らしかったし。
■Henry Cow "In praise of Learning"(1975 UK)
全般的に殺気立っていて、「レコメン=ギスギスした音楽」のスタンダード。その点では微妙にArt Bearsに繋がっている印象もあります。過渡期の作品で、完成度は次作に譲りますが、その分曲調がバラエティーに富んでいるのも高ポイント。
■King Crimson "Larks' Tongues in Aspic"(1973 UK)
何時の頃からか、クリムゾンを好きになれなくなっていました。理由は、ブランディングやプレゼンの巧妙さみたいなものが目に付くようになって、素直に音を楽しめなくなったから。カルト商法的胡散臭さというか、表面的な難解さを装った音楽というか。そう考えるとフレッド・フリスやクリス・カトラーが良く言わないのもわかる気もします。いや、ホントは祭り上げた周りに原因があって、真実はまったく違うのかもしれません。ただクリムゾンの音楽はそんな胡散臭さも含めて魅力があるのも事実で、この作品はその好サンプル。異形のロックのスタンダードとしては否定したくても無理www。
■Latte e Miele "Papillon"(1973 Italy)
このミニチュア的世界感を生み出した才能に敬服。EL&P的手法は方便に過ぎないというか、それすらも精巧なミニチュアとして作り変えられているというか。ポップな3rdも完成度に難ありですが愛聴盤。
■Le Orme "Uomo di Pezza"(1972 Italy)
不器用に紡がれる朴訥としたイメージ群。ドン臭さがプラス方向に作用している稀な例。独自のイメージの喚起力は類するものが無いかと。彼らもとてつもなくイタリアですね。
■Machine & The Synergetic Nuts "Leap 2nd Neutral"(2005 日本)
ソフトマシーンや初期ヘンリーカウ的なイディオムをスタイリッシュに暴走させた和製ジャズロック。ひたすらカッコいいだけの潔さ。近年だとエストニアのPhloxがこれに近いようですが、やっぱ彼らにも復活していただきたいです。